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人と自然を考える会
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地元学を知る

「地産地消で地域の再生を」

 地元学であるものさがし

(2006年10月9日(月・祝) 愛東福祉センターじゅぴあ)
講師:結城登美雄

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作る人が身近にいる幸せ

野村:ありがとうございます。時間の関係であともう一人ですが、ございますか?

会場からB:ありがとうございました。なんか自分の中でちょっとこう、感謝の心をもう一度持たせていただいたなというのは、ウチは兼業農家ですので、母が食事を、また野菜をつくってそれで食事をつくっていてくれますので、毎日夕食はメインは母ですので、そうすると365日の何十年ということで行くと、私もかなりのお金を払わなあかんのかなということを思いましたし、昨日ちょうど地区の運動会がありまして、みなさんのお昼の食事を見ましたら、ほとんどがスーパーの袋に入ったお弁当を持っていらっしゃいました。そういうのを見た時に、今社会は全体そういうふうな動きになっているので、なかなか地元のもの、自分で家でつくったものを、おにぎりでいいから持ってこようかというふうにはなっていないなというところで、だからこそ食育という話なんだろうなと思いました。

 でも、そのスーパーができたことで、私はこの地域の近くなんですけれど、昔は大きなスーパーはなかったんですけれど、最近は大きなスーパーもありまして。一つには高齢化社会になってなかなか買いに行けなくなると、大きなお店も一つ欲しいなというので、私は本当は職場の近くでいつも買い物をしていたんですけれど、そのスーパーができてからは、出来るだけ地元のスーパーがなくならないようにということで、「そこで買おうな」ってみんなで言っていて。そこがいいのか、また元々地域のお店でやってらしゃった方のお店に戻って、あそこのお店のお魚はおいしいと言って、永源寺地区の方に買いに行かれるということもよく聞きますし、その地元のお店も大事だというお話もすごくよかったなというふうに思いました。ありがとうございました。

 最後に本当に思いました。ユンタクというのを本当に地域でしていないんですけど、家族でもなかなかしていないなというのを。本当に反省と感謝、いいお話を聞かせていただいて、反省をするところで、今晩からまたユンタクせなあかんなと思いました。ありがとうございます。

結城:地産地消というのをいろいろお調べになれば、医食同源だとかね、いっぱいありますけど、僕は、もっと現実的に考えれば、身近に食べものをつくってくれる人がそばにいるということの幸せを、どう受けとめるかだと思う。でしょう?

 身近に自分らに代わって野菜をつくってくれる農家がいたり、お米をつくってくれる農家がいたりする。ああ、ここが東近江で私、よかったなぁと思うこと。それが少々高かったりなんかしてもこれからはどうなる時代かというと、今は滋賀は、自給率で言えば48%です。東京1%です、大阪2%、神奈川3%、分かりやすいんです。横浜があったり、大阪があったり、他から来たものを買うしかないんです。

 今、世界が、約13億の中国が…テレビなんかご覧になればお分かりの通り、今東北の魚がどんどん、どんどん高くなって、日本より高く買ってくれる中国に産業的には活路を見出そうとして、国なんかも輸出だとか言ってて。だけどもう自給率、今から15年前に100%あったお魚が今50%を切りつつあります。マグロはだんだん高くなる。三陸のホヤも上がる。ホタテ、アワビ、いろんなものに、北京オリンピックと次の上海万博のためにものすごい買占めが入っています。

 そういう時に、今までは外国から6割来ると思っていた。来ないとは言わないけれども、それよりも高く、ライバルがたくさん現われてきた時に、それはお魚に限らないです。畑のもの、田んぼのもの、今米余りだなんてみんな言っていますよ。「なあに、野菜なんてこんなものだ」って。日本の1億2千7百万人の食糧を支えているのは約300万人の農家です。その内の69.5%ですから7割が60歳以上なんです。これ、社会、日本、福祉をどうする。消費税は上げなければいけない。いろんなこと議論しなければいけないんですが。

 こと一食として欠かせない日本人の食べものは、日本の高齢者が支えているという現実なんです。そして1年に新規の若者は3千人しか就農していません。そのおかげで6万人の農家が毎年消えていっています。この15年で100万人消えたんです。今200万戸切ったんです。あと15年後に100万戸切ります。1%の人が99%を支えられるわけがないんです。それなのに大きなものさしで、大きい農家はバックアップするが小さいのは切り捨てるという農政は、明らかに間違っているんですが、もうそんなことしか出来ないところまで追い込まれてきました。

 国がやれることは限界が来たということなんです。食糧の3割までしか国は保証できないだろうと思います。他のものは誰が食をやるか、僕らは畑を持たなかったり、そういう人たちは多いわけですが、でもその身近な所に小さな畑でも、その畑でつくっている食べものを応援することが出来るはずです。「ぜひ、私に譲って下さい」とか、「運ぶなら僕が手伝います」とか、そうでしょう。「曲がったものをおいしくして給食にやります」とか。いろんな人の手をかけていくことによって身近にある小さなものだって僕らの安心につながる、そういう小さい・大きいをものさしのでっかさで分ける政策の時代はもう限界なんです。

 だから、食べる人がつくる人とどうつながるか、東京はつながる場所がないんです。みんなビルとあれしかないんだもの。別に東京に意地悪しているわけじゃないんだけれど、改めて身近に小さくても農業をやっている人、農地があるということは、「ああ、ありがたいな」って、「ああ、幸せなんだな」って否応なく気づかされる時代がこれからだと僕は思っています。農家は相変わらず、先ほどのじいさんのように、「ああ、なんで割りに合わないんだ」って愚痴が多いと思いますけれど、人間は食べなきゃ生きられないんです。
 ソクラテスという人が『国家』という本の中で、第一章に掲げたのは、「国家にとって何が大事ですか?」とプラトンたちに聞かれてソクラテスは、「国にとって第一の課題は生命と生存のための食糧の供給なんだ」って。「これが国家の第一章なんだ」って。

 だけど、この国は、他のものはがんばったけれども、食糧に関しては完全に手抜きです。そこに不安があります。他人の国の食糧が足りないだろうと、北朝鮮に言う資格がないんです。ただせめてそれは日本なんていう国では考えられないけど、自給率はいいんです、もう。国の自給率なんか下がる一方です。予測します。10年後に国は45%にするという法律をつくりました。食糧農業農村基本計画、5年経って無理だから5年先延ばしして、2015年に45%にすると一応先延ばししたんです、早めに。2015年には30%切ります。これは断言していいです。

 だけど、私たちは率はいいんです。自給力を持ちたいんです。ヨタヨタしているおばあちゃんのように見えても、作物をつくる力を、持久力を持つんです、でしょう? その自給力が地域で高いということが大事なのです。でしょう?

 他人行儀に他人事として見ない、わが事として考えると、あのおばあちゃんが今日もがんばっていること、このおじいちゃんががんばっていることが、この近江の食べることの不安をなくしたり、食べる安心になったりしていく人たちなんだ。その人たちとどう関われるかを考えることが、まず一番基本の地産地消だと思うんですね。「なんだこれ、近江のもんかい? 近江のもんでないんだったらダメだ」とか、「なんだこんなもんか、東近江のは」なんて、そういうことではないです。ものの以前に種を蒔き育てる人がいなくなったらものに文句つけられなくなる。でしょう?

 わが隣人としての農家。農家から見ればわが隣人としての市民とどうつながるか、そこにみんなの知恵を重ね合わせていけたらいいなと僕は思っています。それが地産地消かなと思いました。

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