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人と自然を考える会
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地元学を知る

「地産地消で地域の再生を」

 地元学であるものさがし

(2006年10月9日(月・祝) 愛東福祉センターじゅぴあ)
講師:結城登美雄

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「物価が高い」と愚痴るスウェーデンの町の人たち

 スウェーデンという国があります。福祉社会のお手本として、日本の行政の人、研究者、盛んに行っています。東大の財政学の先生で神野直彦という人がいます。『地域再生の経済学』という中公新書なんかをお読みいただければ分かりますが、その神野さんもスウェーデンの調査に行きました。ストックホルムが首都であります。ストックホルムから約120kmぐらいの小さな3000人ぐらいの町で調査を行なった時に、町の人たちとこうやって話して、その町の人たちの一番の愚痴は何か、物価が高いということなんです。

 なぜなら高福祉の国、スウェーデンは高負担の国であります。消費税、いろんな税も入れて約5割が税金であります。必死になって父ちゃんがんばって50万稼いでも25万税金ですよ。日本人ならもう働く気しなくなるね、ですね。でもそこを踏み切った国がスウェーデンです。僕はその根本のところを日本は越えられるかなというと、難しいなというのが正直なところです。東大の財政学の権威、あるいは財政諮問会議のメンバーの神野直彦さん、その愚痴を吐く。だからちょっと何か買ってみようかと思って、これを買おうかと思って買うと高いから、「ああ、物価が高い。物価が高い」というのがスウェーデンの人たちの田舎町の人たちの実感。それに対して東大の先生はどのようなアドバイスをしたでしょうか? みなさんならどういうアドバイスされますでしょうか?

 俺も「東大もたいしたことないな」と思いました。「ストックホルムまで車で1時間で行くんだから、あっちのディスカウントストアや大型スーパーでまとめ買いしたらいいでしょう」って言ったんですよ。東大の財政学もそれぐらいのアドバイスしか出来ないんですよ。俺の方がもっとましかと言ったら、俺も同じでしょうね。さあ、それに対してスウェーデン、ストックホルムから百数十km離れた田舎町のおじさんおばさんはどう答えたかということです。みなさんならどうお答えになるかです。

「商店だって大切な隣人」

 スウェーデンのおっさんたちはこう言ったんです。「そんなことをしたらうちの町の商店が潰れてしまうではないか」と言ったんです。「商店が潰れて困るのは結局は私たちなんだ。ここには運転のできないお年よりも子どもも多いし。第一、あの商店だって俺たちの大切な隣人なんだ。隣人を失なって何がまちづくりであるか、何が地域であるか」。日本人が失いつつあるもの、それは隣人であります。隣人とはただ隣にいる人、物体ではありません。「物価が高い、物価が高い」と愚痴りながらなおその商店から買い物を続けている、そこに何か沖縄のおばあに通じる、「高いビールはうまいんじゃ」。私たちは「10円安いあっちの店がいいわね」と言い、「100円安いこっちの店はステキね」と言ったんです。「あなただけよ」って囁かれて、どんどんどんどん大きいところにみんなやられて、商店街がシャッター通りになり、農産物が安く買い叩かれ。あれは私たちのせいだという、大事な隣人の問題なんだと受けとめるところから地産地消というのは始まるんではないかと私は思っています。そういうことを考えた時に、私はまだまだ小さな場所に小さな村に小さな町に希望があるというふうに思いました。

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