地元学を知る

「地産地消で地域の再生を」

　地元学であるものさがし

「テーゲー」が一番大事

野村：本当に長時間ありがとうございました。最初にも申し上げましたように、先生は、今お話いただいたこと、あるいはその他のことも含めて、みなさんがお感じになっていることを一緒にいろいろ話をしたいと、こういうふうにおっしゃっております。先生がお帰りになる時間もありますので、半時間ぐらいは取れると思いますから、どうかご遠慮なく、なんでも結構です。今日のお話でもいいし、その他日頃お感じになっていることでも何でも結構ですので、お手を挙げていただいて、もうザックバランに一つお願いしたいと思います。いかがでしょうか？

杉谷：ええと、杉谷といいます。沖縄の話の中でですね、三つまではお話をゆっくり聞かせていただいたんですけど、最後の「テーゲー」ですね、これの話をちょっとお話いただけると。

結城：おばあはこれが一番大事だと言っていました。一番大事なことを忘れるんだから困った、すいません。アバウトという意味です。「人生100点とるな。ええかげんでいこうぜ」という、「たいがいでええよ」という。別な意味ではまあ、「なんくるないさ」みたいなもんで、「ほんな、あんちゃん、お前は生真面目すぎる」って言うんです。「真面目はつらいよ、テーゲー、テーゲー」って。「人生60点でダメかい？」って、「失敗したらやり直さ、ええさ」って、「アバウトでいこうぜ」って。

　「べきだ、べきだ、べきだ、って、そんなの疲れるよ」って。「100点でない」って言われたら、どれだけ今の子どもたちは救われるでしょう。「60点とればお前、ＯＫだぜ。最高、最高」って言われたらどうでしょう、「今日出来ないことは明日やろう。明日出来なかったら明後日でやろうで、ええじゃないか」って。「アバウトでいこうぜ」って「いいかげんでいこうぜ」って、だらしなくとは言わないけれども。

　なんか100点という恐怖感って僕らにあるような気がするんですよ。あっちに比べてこっちが劣るとかさ、なんかありません？　そこから何かこういう大らかさがなくなっちゃって、他人を批判してみたり、ないものねだりってそこから出てません？　「なんでウチは、あっちにはあるのにさ」とか。

　「テーゲー」、平仮名で「て・え・げ・え」って、俺はメモに。「てえげえ、たいがい、アバウト、そこそこ、いいかげん」、それでええんじゃないかって。俺は一番ほっとしたね、そんなに何か、こっちでは言いません、「神経たかり」なんて？

　「長生きできねえよ、あんちゃん」って。なんで長生きできているか、それはテーゲーだからです。それを「有機か、無農薬か、添加物は入っていないか？」、それだけで疲れて寿命縮まるよ、俺。別に「毒を食らわば皿まで」なんて、そこまでは行かなくともいいけど、「テーゲーでいこうぜ」って。緊張した時なんかいいですな、「ま、テーゲーに、テーゲーによ」って。

　それが隠居というものの役割だと言っていました。「隠居というのは、あんちゃん、隠れ居ると書くな。みんなの一線は降りているが、死んではおらんよ」って。若い衆が大変だなという時には、「なあ若い衆、これはこう思うがどうだ？」とアドバイスする。そう言えば落語の熊さん八つあんだって長屋で何かご隠居をバカにしていますな。バカにしながらも、自分が困るとどうするかというと、ご隠居の所に行くんですよ。困り事があると「ご隠居！」って。それでご隠居から「そういうものはこう考えるべきであって、こうすればよい」とかってアドバイスもらうと、「あれは単にボケてはおらん」とかね、「うちのご隠居もただもんではない」って。

　社会の一線ではないが、隠れ居りながら社会をちゃんと見据えている。そしてその役割をちゃんと果たす。それを隠居と言う。沖縄のおばあは単に歳をとっているだけではないですよ。僕らばっかりいたら、「高いビールはうまいんじゃ」なんて教えてくれる人いないでしょう。日本人ばっかりだったらみんな、どっちが安いってそっちにばっかりつくでしょう。そん時に沖縄に行ったら、ご隠居が「高いビールはうまいんじゃ」って。「何、ばあさん言っているんだ？」って俺は思いましたよ。「104歳になるとやっぱりボケるのかな？」みたいに思うではないですか。それはちゃんとご隠居の役割、「高いビールはうまいんじゃ」、ねえ。そういうご隠居になりたいもんですな、はい。これが4番目、もっとも大事。

　これは全部金がなくても出来ることなんだって。ええですか、予算なくても出来るのね。テーゲーは、ユイマールも。アタイだって出来るでしょう。ユンタクだって予算がなければユンタクできねえってことじゃないでしょう。「お茶飲もうや」って。

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