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人と自然を考える会
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地域資源を生かした「まちづくり」事例学習(その3)

「東近江を循環・共生の大地に」

 地域が自立して生きる仕組みづくり

(2006年12月23日(土) 愛東福祉センターじゅぴあ)
講師:
宮本憲一 嘉田由紀子 藤井絢子

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 それでは、次の事例紹介を始めさせていただきたいと思います。第2番目でございますが、永源寺で牧場を経営されております池田牧場の池田喜久子様でございます。池田さんの所はみなさん充分ご承知だと思いますが、酪農家に嫁がれましたが、始めは事業は順調でありましたが、途中から牛乳の余り現象から生産調整に追い込まれました。その後、せっかくつくった牛乳の有効利用のための事業展開を図りまして、イタリアンジェラートというアイスクリームに到達されました。それがまだまだその後諸問題がありましたがそれをクリアされまして、今では非常に軌道にのりまして夏場京阪神から長蛇の列ができるほど有名になられたということでございます。その後古民家を移築されまして、農家レストランをされましたが、これは地元の非常に安全な食材を利用されるということと、もう一つ先ほどから話に出ております獣害で駆除されたシカ肉を利用されたレストランとして最近大変有名になってきているということでございまして、今回は池田牧場さんの地産地消の取り組みにつきましての話で事例紹介をしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

第2部 事例報告
「池田牧場の地産地消の取り組み」
 池田牧場取締役 池田喜久子氏

 みなさん、こんにちは。池田牧場のあらかたのお話をさせてもらいます。

 池田牧場というのは、昭和31年に夫の父が牛三頭飼ったのが始まりでした。私は47年に結婚して、専業酪農家の嫁となりました。当時は1ドル360円という時でしたので、なかなか輸入飼料というのが買えなかったので、朝5時頃から起きて牛の世話して搾乳して、その後朝ご飯食べたら朝から草刈り、お昼ご飯食べてもまた草刈り、夕方牛の世話してっていうので、春から秋まではずっと草刈り、冬はカブラを雪の下から引いてやる、秋になったら稲ワラを一年分集めるっていう。もうひたすら肉体労働をやっておりましたが、昭和57年に今の所に牛舎を移転した時にたくさん借り入れをして機械化にして、労力の省力化に努めました。借金返さなあかんし、がんばらなあかんと思ってたら、58年頃から生産調整というのに入りまして。牛乳というのは毎日毎日集めて行かれるんで、今日は一頭300k�Pしか持って行かへんって言われると、一頭500k�P一日出てたら200k�Pは自分とこで抜いて畑に棄てる。毎日毎日朝がんばって牛の世話して、草刈って、また夜も搾って、次の朝ローリーが来るまでに、決められた量以外のもんは全部自分で棄てんなあかんていう変な時代が来ました。牛が一頭生まれると、大体40キロぐらい最初は出るんですけど、一頭生まれたらまた余分に40キロ棄てんならんという、なんかもう生産者としてはいてもたってもいられん変な時代が来ました。

生産者と消費者の距離を実感

 こんなに一生懸命毎日毎日きばってんのに消費者の人のためにおいしい牛乳を出そうと思って一生懸命がんばってんのに、ほんとに消費者の人が生産者の苦労というのを知っててくれはんのやろかという疑問が出てきました。

 腹が立つのと同時に、牛乳ってローリーでダーっと集めて行って、メーカーで加工されますので、私とこの牛乳がおいしいっていう評価はどなたからもいただけないんです。それでもやっぱり生産者としてこんなに努力しているんやから、一言でええから「あんたとこの牛乳おいしかったわー」って言ってもらわなこれ以上がんばれへんというところまで来て、どうしたらあんたとこの牛乳おいしいねって言ってもらえるかな。それなら自分で売るしか方法がないなっていうので、いろいろ考えた結果、牛乳でつくったジェラート、牛乳でつくったアイスクリームを出そうっていうふうに決めて、平成9年の3月にオープンしました。

 なんとか順調に滑り出しが行きまして、ほんとにたくさんの人にかわいがってもらってほんとにたくさんの人に「おいしい牛乳やねえ」、「おいしいジェラートやねえ」ってやっと言ってもらえるようになってきたら、今度は「牛の所やでにおいが嫌やねえ」とか「蝿が出てきよるねえ」とか、もうどうしようもない問題につきあたりまして。なんとかジェラートも軌道に乗ったから、ちょっと牛を減らそうかって夫に言いましても、いや、牛を減らすためにジェラートやったんやないやろ、専業農家を見てもらうためにやったんやから牛は減らさんとこの一点張りでした。

 それもごもっともやなと思ってて、お客さんにいちいち説明しました。牛のにおいっていうのは、ある程度までは乳酸菌で殺せるんですけど、あんまりにもにおいを消しすぎると、フェロモンっていうんですか、牛自体のにおいがなくなると種つけも悪うなってきて、牛の状態も悪うなるから、これ以上のにおいは消せないんですっていうお話やらいろいろして、本当にたくさんの方とお話しさせてもらったんですが、でももう生産者と消費者があまりにもかけ離れているっていうことがよく分かりました。

 たとえば、「牛ってこんな大きいんやなあ」って言われる。ここで仕事していると、「なんかテレビで見てる象つかいみたいに見えるわ」とか、そんな大層なと思うのは序の口で、「牛って何歳になったら牛乳が出るの」って言われるんですよ。

 「え? 何歳になったらって違うやろ。牛って種つけて280日したら赤ちゃんが生まれて、赤ちゃんが生まれたら牛乳が出るんですよ」って言うたら、「あ、そうかあ」って。「へえ?」って思うんです。

 また、「牛って一回に何頭生まれるの?」って。「へえ?」もっと困りますよね。「牛って一回に一頭で、よっぽどのことがなかったら双子っていうのはなかなか出てこない。たいがい一頭ですよ」言うたら、「あ、人間と一緒かあ」って。ああこういうのも知らんでいはんのやと。

 もっとひどい話になったら、「乳牛っていうのは、雄も雌も乳が出るんやろ?」って言う。これ大人の人が聞かはるんですよね。「えー。乳牛は雌しか牛乳は出ないんですよ」って。もうこんなことまで伝わってなかったんか。それなら生産者がどんな努力をしてても、こんな基本的なことも分かってなかったら、消費者の人にすべてのことが伝わるわけはないよなあと思ったりもしました。

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