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人と自然を考える会
所在地
滋賀県東近江市八日市金屋2丁目6番25号
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地域資源を生かした「まちづくり」事例学習(その3)

「東近江を循環・共生の大地に」

 地域が自立して生きる仕組みづくり

(2006年12月23日(土) 愛東福祉センターじゅぴあ)
講師:
宮本憲一 嘉田由紀子 藤井絢子

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農家レストランのメイン探し

 この時に、何を出そう、何を池田牧場のメインにしようっていって考えてたら、夫が「こんな小さな六千人ぐらいのところにレストランをつくろうっていうんやったら、他の仕出し屋さんとか食堂とかと同じもんは絶対考えるな」という一言で、へえー、そしたら何があるんやろ。私はその時の頭の中にはごちそうって言ったらおつくりとかエビフライとか海のもんの酢のもんしか考えられない時に、へえー、全部そんなん町内の仕出し屋さんやらつくってはるし、何が残ってるかなと。何も残ってないんですよね、私のごちそうの中で。

 で、長男に「あんたにとってごちそうって何や」と聞いたら、「それは簡単なことや。健康で長生きできるもんをおいしく食べさすことがごちそうや。そのために駆けて走るというのがご馳走や」と言ったんです。「あ、これやったらひょっとしてお母さんにもできるか分からん」というので、農家レストランは農業者が駆けて走って探していける範囲内のものを出そうということにしました。

 メインの食材なんですけど、あと何が残ってるかっていったら、イノシシは牡丹鍋でも東部の方でやっておられましたので、イノシシも消してしまったらシカ肉とイワナが残りました。イワナはやっておられる所があったんですけど、肉の嫌いな人のために何かっていうので、イワナを探しました。メインの他のものは地元のお野菜と伝承料理だけでいこうと。お出しするスタイルは、大きなお皿一枚のワンプレートにして、メインをのせて、あとこまかなお野菜とか伝承料理とかは、つまもんの葉っぱとかいろんなもんに載せてお出しして。せっかく鈴鹿の山がきれいでおいしい水を生んでくれるのに、上流にいるものがどんどんどんどん水を汚していったんでは上の者の努めが果たせないというので、なるべく洗い物は少なくしようというので、ワンプレートでお出しするっていうふうに決めました。

 シカ肉シカ肉って簡単に言ったんですけど、シカ肉って食べたこともないし、どうして食べたらいいか困って。うーん、ほんまにシカ肉でええかなと思った時に、ノーベル賞をもらわれた小柴さんの奥さんがなんかインタビューに答えてられて、「メインディッシュはシカ肉でした」って言われたんで、あ、まんざら間違ってないし、北欧の方ではシカ肉でええんかなと思ってたら、ちょうど北欧のレストランでシェフをやっていらした方が大津にいらっしゃいましたので、その方を先生としていろいろ調理方法を教えてもらいました。

 でも、やっぱりシカくさくって。先生、日本ではもっとにおいを消せんかったら受け入れてもらえへんの違うやろかって言って、いろいろにおいを消す方法も教えてもらいまして、今日みなさんに食べていただいたようなシカ肉のローストができあがりました。

 あとはイワナなんですけど、イワナはちょうど先生がずっとやってたって言われたんで、イワナの炊き方も甘露煮でなしに、やわらか煮としてあっさりと食べてもらうようにして。いよいよお野菜なんかも地元のおばちゃんが持ってきてくれたのを私の所のスタッフみんなが考えて出して、よし、これでできあがりやと思って平成15年の11月30日にオープンしたんですが、ほとんどお客さんて来てくれはらへんし、たまに地元の人が来てくれはっても「こんなん家で食べてるもんと同じや」言うて、えらいあっさりあきらめて帰ってくれはって、またあかんし。そのうち隣のジェラートはおかげでどんどんどんどん流行っておりましたので、一年間に10万人ぐらいの人がお見えになるんですけど、横の香想庵は閑古鳥が鳴いておりました。

 何があかんねやろ、どこのやり方があかんねやろ、なんでやろってまた悶々とした日をやっておりましたけど、たまにのぞかれたお客さんに「ここは何を食べさしてくれるんや」言わはるから、「シカ肉とイワナです」言うたら、「シカは食べるもんやないやろ」言わはるから、「ほなシカはなんですか」言うたら、「それは見るもんや」とか「神の使いや」とか言わはるんです。「でもそんなことないんですよ。今ここら辺はシカの害で困ってて、もうネットなしでは何もとれない。お米もとれない、野菜もとれない、花も植えとけない。全部食べられるから。でも、それは人間が勝手に、ここは人間が住むとこ、ここはシカが住むとこって勝手にエリアを決めて有害にしてしまってるから。有害でシカを邪魔やからと撃って山に放っといたんでは、シカに申し訳がないで、きちっとシカのお肉をいただいて、私らの命につなげてもらうっていう。いただきますっていうのはたぶんここから来てると思うんです」というお話しさせてもらったり。

 「イワナと鮎とどう違うんや」と聞かはる人には、「なんでよー。イワナっていうのは、もう氷河期の生き残りの魚で、清流にしか住めないすごい魚で、めったに口に入らへんのやけど、甲津畑の奥の方で養殖に成功されてなんとかみんなの口に入るようになったお魚で、おいしいですよー」って言って。もうひたすらこの口で宣伝して、宣伝して宣伝してやっと今年の夏頃から満席っていう日がどんどん出てきまして。やっと三年で軌道に乗るようになりました。

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