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人と自然を考える会
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地域資源を生かした「まちづくり」事例学習(その3)

「東近江を循環・共生の大地に」

 地域が自立して生きる仕組みづくり

(2006年12月23日(土) 愛東福祉センターじゅぴあ)
講師:
宮本憲一 嘉田由紀子 藤井絢子

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キューバの有機農業、イタリアの環境再生

藤井:先ほど宮本先生が最後の方で地球温暖化のところについて触れられなかったというお話がありましたが、私は36年ぐらい前に神奈川から来て、その36年の間に滋賀県は本当に変わりました。今のような水環境の問題から、エネルギー、農業、食糧のところまでかなり滋賀県は取り組みが進み始めていると思うんですが。でも豊かなんだと思うんです、この地域は。だから、なぜこんなに危機感が薄いか、まだどーんと背中を押されていない。

 一つだけみなさんに紹介したいんですが、キューバという国がありますが、キューバは1991年にソビエトが崩壊した時に全く支え手がいなくなった。それから、アメリカからの経済封鎖で、エネルギーで言えば十何%、食糧自給率が全くない国だったので、食べるものも何もなくなって、さあどうしようといった時に何をやったかというと、まず食べ物をつくるということで、その結果10年で220万のキューバの都市は有機農業で賄うと。しかも、キューバ全体の農産物の30%をハバナという220万都市がやっているというところまで。

 そこまでの危機感がないと動かないかもしれないんですが、でも、行け行けどんどんで国中が動いてきたわけで、そういう中で、宮本先生の発表の中で一つ聞きたくて抜けていたのですが、環境再生で成功したイタリアの事例をちょっとご紹介いただきながら、なぜ今までの開発のところから環境再生ということでこういう形ができたのかということをこの地域の参考にもなると思いますので、ちょっと教えていただきたいと思います。

宮本:あ、そうですか。今、世界中で環境再生とか都市再生っていうのが共通課題になっているんですよね。ヨーロッパ、アメリカ、日本を含めて先進工業国がこれまで高度成長をしてきたわけですけれども、その成長した後始末、もっと言えば今までとは異なるシステムに変わらなきゃならないんじゃないかという大きな転換期に来ていて、そのことが地球環境問題なんかにも非常によく表われているんですが、そこからどの国も環境再生とか地域再生ということを政策課題にしているんです。

 いくつか事例がありますけれど、一つ私が10年以上にわたって調べてきたイタリアの例を申しますと、イタリアにはポー川っていう非常に大きい川がありまして、その地域を干拓してイタリアの農業が発展したんです。ところが、急激に干拓しながら近代化していったものですから、農薬だとか化学肥料が大量に投入されたんですね。このために川が汚れ、海が汚れ、しかも生産力がどんどん落ちていってるんですね。有機化していない、無機的なものを使うわけですから。それで、1980年代にこのまま今までのような工業化した農業を続けていいのかどうかっていう反省が起こりまして、干拓地を元の湿地、あるいは海に戻すという政策がとられたわけです。

 初めはラベンナっていう所がありまして、イタリア最大の石油コンビナートのある都市だったんですが、そこを見学に行きましたら、そこの新しい都市計画では「干拓農地を全部海に戻す」と言っていたので、そんなことどうして農民が承諾するのかというのを疑問に思っていたんですけれど、実際の海に戻したり湿地に戻したりする計画って言うのはラベンナの周辺だけじゃなくて公害全域に6万haに渡って干拓地を元の湿地や海に戻す計画が進んでいるんですね。

 実際にその計画はかなり進んでいまして、イタリアではパルコ化っていうんですが、パルコっていうのは公園なんですが、向こうのパルコっていうのは施設があって小さな自然があるようなのを公園とは言わないんですね。そこで人々が生活し、生産している、しかし全体が自然と共存するような非常に広大な地域を公園と言っているんですが、その6万haを湿地や海に戻してそこをパルコにすると。その中にはちゃんと農業もある程度残るんですけれど、今までのような農業ではない。それから、湿地の所には森林を再生させて、その地域は子どもの環境教育の場でもあるし、それから自然と遊べる観光地にもなるというような計画が進んでいるんです。

 コンビナートの方もこれ以上拡張するのは中止にいたしまして、厳重なリスクアセスメントをやりまして、周辺に干拓地を森や湿地に戻すような所と工場を共生させると。ラベンナっていう所は元々中小企業の職人の織物や工芸品が強い所だったので、むしろそちらに重点をおいて、ラベンナを再生するというような試みが進んでいます。

 初め聞いた時にはですね、イタリア人はほらを吹くので、またイタリアのほらかと思っていたんですが、10年経って行ってみると本当にやっていまして、非常に美しい森と野鳥が帰ってきていたりしまして、子どもがたくさん先生に連れられて中で環境教育しているのを見まして。それから、農民にも会ったんですけれども、農民自身も今までのような農業ではない農業をしようというので、その地域の産物を活かしてエコツーリズムで。まあイタリアの農家も、ヨーロッパの農家ってみんなきれいですからね。エコツーリズムで来て、そこで泊まって一緒に作業して、生産物をもらうというのが非常に一つの喜びになっているんですね。彼らに言わせれば農業がこれからの新しい主産業に返るんだと言っていましたね。

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